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花子さんは、僕が仕事をしている時でも、
机の横に、用意した椅子に座っている。
 
いつも、そばから離れることがない。
 

 
でも、今日は調子が良かったのか、
 
ランを見てくる。
 
と言って、10時頃に、
2階に上がっていった。
 

 
僕は、毎日、何かしらの予定が入っている。
カレンダーには、メモ書きで一杯だ。
 
デイサービス見学、ケアマネージャー打ち合わせ、
親父、お袋、そして花子さんの病院付き添い、
納品、商談、等々。
 
でも、今日は、珍しく、空白になっていた。
こういう日は、溜まった事務処理をやりこなす。
 

 
花子さん、30分ぐらいしても、降りてこない。
2階へ見に行ったら、どこにもいなかった。
 
近所を、うろうろしてるんだろう。
 
甘く見ていた。
 
 
 
車で、周りを探しに出たが、
どこにもいない。
 
駅の方にも、行ってみる。
家から、歩いて20分くらいのところに倉庫がある。
そこへも行ったが、見当たらない。
 
ランとの散歩コースを、回ってみた。
 
見つからない。
 
少し、あせり出す。
 

 
一度家に帰って、戻ってるか、確認。
 
ランが、階段の上から覗いてるだけで
誰もいない。
 
どこに行ったのか、
電車の、上り方向か、下り方向か。
 
見当をつけて、
下り方向の、幹線道路を走る。
 
見つけることができず、
12時を過ぎた。
2時間たっても見つけられないのは、
歩き続けて、遠くに行っているかも。
 
 
 
携帯が鳴った。 
見慣れない、着信表示。
 
はい、スリブリです。
 
スリブリ花子さんの、ご家族の方ですか。
 
ハイ、そうです。
 
こちら、A警察署です。
今、スリブリ花子さんを保護しています。
すぐに来れますか。

 
はい。
 
花子は、若年認知症です。
徘徊していたと思います。
今、B駅の方を探していました。
すぐに伺います。

 
 
 
15分後、警察署に着いた。
受付に行ったら、すぐに分かって、
3階へ通される。
 
花子さんを見つけ、
作り笑いで、
 
どうした~
 
花子さん、笑顔で、うなずいた。
  
 
 
警察官から、説明があった。
 
高速道路の、Cインターの降り口を
歩いている女性がいると、
110番があったんです。
 
すぐにパトカーを向かわせて、
高速道路上を歩いているところを
保護しました。
 
持ち物を見たところ、
財布を持っていたので、
このメモを見つけ、電話しました。
 
聞いているうちに、
血の気が、引いてきた。
 
そこには、僕の字で
  
 
  本人   スリブリ花子
 住所   ●○●○
 連絡先  △▲△▲
 
 ご迷惑をお掛けします。
 スリブリ花子は、若年性認知症です。
 何かありましたら、上記連絡先まで、
 お電話をお願いいたします。

  

 
これを見つけ、僕の携帯へ電話をしてくれた。
2年位前に、財布に入れておいたメモだ。
 
その頃は、徘徊の役に立つとは思わず、
お店で買い物をしたとき、現金が足りないなどの
トラブル用に、入れておいた。
 
財布の中は、メモ用紙1枚と、
お守りだけで、現金、カードはなかった。
 
普段、花子さんは出かける時に、バッグ、財布は持たない。
いつも僕が一緒なので、必要ない。
買い物でもしようと思って、財布を持ったのか。
 
これがあったおかげで、すぐに連絡を頂いて、
助かった。
 
  
 
二人で、警察を後にした。
 
花子さんは、何が起きたのか忘れていて、
機嫌が、戻っている。
 
僕も、責めない。
責めても、分からない。
教えても、今後気をつけることはできない。
 
介護者が、注意を怠ったから起きたことだ。
僕が気をつけなければ、ならない。
 
 
でも、良かった。
高速道路で、もし車にはねられたら、
命が、なくなるところだ。
 
運転をしていた被害者の方の、
人生をも、狂わせてしまう。
 ( 高速道路上で、歩いている人を
   はねた運転手は、加害者でなく、
   被害者だ。 )
 
自分達だけのことでは、
済まされない。
 
110番通報をしてくれた方、
すぐに動いてくれた、警察署。
無事に保護されたことに、
感謝する。
 
 
 
高速道路出口まで、
真っ直ぐ歩いても、30分以上かかる。
歩くことのない道だ。
そこまで、どのようにして、
行ったんだろう。

 

  
 

 


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