9月2日、13時30分 
神田駅近くの取引先で、
商談があった。
家を12時前に、出ないといけない。
 
午前中は仕事をし、
花子さんに、早めの昼ごはんを
食べさせようと思い、
11時15分頃、2階に上がった。
 
花子さんを呼びに、ベランダへ。
猛暑の中、うろうろしている。
 
疲れた表情。
すぐに部屋へ入れ、
エアコンの下に座らせ、扇風機をつけた。
出した水を、美味しそうに飲んだ。
 
大丈夫か?
 
だいじょうぶ。
 
部屋に入ってないと、熱中症になって、
倒れるぞ。
 
へいき。

  
昼食を食べさせ、僕は、仕度。
時間があれば、駅で立ち食い蕎麦の予定。
   
今日、仕事で、出かけないといけないんだけど、
大丈夫?
 
だいじょうぶ。
 
僕が1階で仕事をしている時は、
1~2時間置きに、2階へ上がって、
水を飲ませ、トイレに誘導する。
体調管理もしている。
 
でも、その日は、12時前に出て、
帰ってくるのは、6時頃。
 
冷蔵庫は、開けられないが、
テーブルの上に、目に付くように
飲み物を用意しておけば
自分で飲むので、大丈夫と思う。
 
だけど、やはり心配。
外ではなく、エアコンを点けた部屋にいてほしい。 
 
ベランダに出る窓は、2箇所ある。
そこのサッシの、クレセント(回転式の錠)をロックして、
エアコンをかけて、出かけた。
 
 
 
神田駅で、立ち食い蕎麦を食べることができ
取り引き先へ。
 
商談中、携帯が鳴る。
お袋からだった。
 
3時に、1件目の商談が終わり、
家に電話をする。
 
呼び出し音だけで、電話に出ない。
もう一度電話をした。
 
受話器を取った
だが、話はなし。
 
花子さんは、受話器を取っても、
耳に当てて、話すことはない。
鳴ってるんで、受話器をとったけど
どうするかわからず、そのまま置いたと思う。
 
少し前は、僕が外に出ると
3分おきに、電話が掛かってきた。
今は、電話のかけ方がわからない。
 
受話器を取ったという事は、
倒れていない。
 
 
ひとまず、安心。
 
 
 
 
お袋から着信あったので、電話をかける。
 
なにかあった?
 

今は音が止んだけど
さっきまで、2階ですごい音がしてたんで、
大丈夫かと思って・・・

 
サッシを、ロックして出たから
多分、窓を叩いてたんじゃないかな。
割れることはないから、大丈夫だよ。
 

なんだか、大工さんが入っているような
すごい音だったよ。

 
今は?
 
静かになっている。
 
さっき電話に出れたから、大丈夫だよ。
 
なら、いいけど。
 
僕が家にいる時も
あまりに、暑いときは、
クレセントをロックする。
花子さんは、出れないので、
ドアを、ドンドン叩く。
そのうちに、振動ではずれて
窓が開く。
 
今回も、多分同じだろう。

 
 
 
もう1件回り、帰宅。
6時頃に、帰れた。
 
家に近づいてきた。
道路から、ベランダが見える。
 
おーーい。
 
呼んでみた。
花子さん、ベランダから顔を出す。
ニコニコして、手を振る。
 
大丈夫そう。
 
 
 
 
玄関前まできたら、
食堂テーブルの、椅子が一脚
バラバラになって、落ちていた。
 
玄関を開ける。
ランが、下駄箱の下の隙間に
縮こまって入っていた。
 
花子さんが、大きな音を出した時の
避難用指定席だ。
 
階段を上がって部屋を見たら、
 
 
 
 
 
壊れていた。
 
 
 
 
 
寝室のベッドは、布団がはがされ、
厚いマットが投げられて、横になっている。
マットの下のベニヤ板は、踏みつけられて、
大きな穴が開いている。
 
カーテンは、はずれて散らかっている。
引っ張って外したらしく、プラスチックのフックは
すべて折れていた。
レースのカーテンは、引きちぎれている。
 
居間の座椅子が、折れてベッドの上に。
 
お金を入れているコーヒー瓶が
粉々に割れて、散らかっている。
 
掛けてあった服は、丸めて転がってる。
 
居間に行くと、ステレオのスピーカーが
落ちていた。
カバーは、外れてる。
 
電話が、電話線の元から、引きちぎられていた。
 
椅子は、転がってる。
 
本が、何冊も投げられた跡。
 
外に回ったら、サッシの網戸が
一枚、枠が曲げられ、網が破けていた。
 
ベランダ干し用の物干し台は、バラバラ。
 
他にも、色々・・・
 
  
 
 
 
サッシの錠に、ロックをしたのが失敗だった。
 
 
 
いつものように、ベランダに出ようとしたんだろう。
鍵を回そうとしても、動かない。
ドアを叩いても、誰も助けてくれない。
 
監禁状態になった、恐怖。
 
自分の家という意識が、なくなったので
周りは、まったく知らないところ。
 
不安で、不安で、押しつぶされそうになり、
パニックになった。
 
泣きながら、恐怖心をなくすために、
物にあたる。
 
周りにあるものは、なんだかもわからず
そこから逃げたいために、
すべてを、どかす、投げる、壊す。
 
 
 
僕は、呆然となったが、片づけ始めた。
掃除機を掛けているうちに
情けなくなり、涙が出てしまった。
 
洋服をしまう元気はなく、
使っていない息子の部屋に入れる。
 
7時から片付け、終わったのが9時。
ぐったり疲れた。
 
 
 
花子さんは、下を向いて、
ずっと椅子に座ってた。
 
 
 
さあ、片付いたよ。
晩ご飯にしよう。
今日は、出かけていたので、
弁当だよ。
 
すみません
 
いいよ、
ビールでも飲むか。

 
花子さん、美味しそうに弁当を食べた。
 
 
 
 
前回の、腰椎の打撲は僕の責任。
 
今回もだ。
 
花子さんがベランダに行くのは、理由がある。
初めの頃は、両親が介護認定を受けたので
たくさんの人が、出入りするようになり
そこから逃げていた。
 
でも、今は役所の人が来ても、ケアマネージャーにも
ニコニコして、話すことができる。
 
今は、自分の居場所が、わからなくなったからだ。
今住んでいる家は、他人の家と思っている。
思い始めてから、トイレの場所、風呂場、
部屋の配置が、わからなくなってしまった。
 
階段を降りれば、外に出られると言うのも
わからない。
 
実家に帰るために、外に出るのは、
窓を開けて出かける、
ベランダだと、思っている。
 
ベランダを、行ったり来たり
歩き続ければ、家に帰れると思っている。
 
その、家に帰る出口を
ふさいでしまった。
 
不安になって、パニックになるのは
当然だ。
 
今回もまた、僕の失敗だ。
 
 
 
でも、この状態で良いのか。
この2回の事件で、
 
深く考える。
   

      
 
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