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最近の花子さんは、
僕のことが、わからなくなってきている。

病棟に入ると、
看護師さんが、花子さんのところへ行き、

花子さん、ご主人が来たわよ。

と言って、連れてきてくれる。

花子さん、ずっと下を向いたままだ。

以前だと、僕を見つけて、
びっくりした、大声を出し、
ニコニコして、抱きついてきたのだが。


花子さんは、下を向いたままなので、
僕は、膝を折って、
花子さんの視線に目を、
合わせる。

ほら、お父さんだよ。
わかる?


表情が変わらない。

話しかているうちに、ニコッとする。

お父さんだよ。
わかった?

首を振る。

出てくる言葉は、
文字の積み重ねで、
意味不明。

でも、一生懸命、話し続ける。

そうか。
そうなんだ。


相槌を打つと、安心したように、
笑顔になる。


いつも行くのは、夕食の時間だ。
看護師さんが、面会室を用意してくれる。

二人になると、
毎回、おしぼりで顔を拭き、
手を拭く。

髪に、スプレー(寝癖直しと、潤い)をして、
髪をとかす。
リップクリームを塗って、
顔に、乳液。

そのころになると、笑顔が出て、
気持ちが和らぐ。

お父さんだよ。
わかる?


何度も、繰り返す。

花子さんは、僕が誰だか、
何を言ってるか、わからない。
おどけた表情で、ごまかす。

最近得意な、
口をとがらせ、目は上を向く、
ひょっとこ表情。

機嫌が良ければ、まあいいや。



試しに、

花子の、一番好きな人は誰?

と言ってみた。



なんと、

僕を、指差した。



花子さんは、
これまでの、夫婦、親子、友人関係を、
忘れているのだろう。

でも、今、一番安心して、
笑顔を出せる相手を、
誰だか知っている。



看護師さんに、

最近、僕のことを、
忘れてしまったみたいです。

と言った。

そんなことないですよ。
私たちに見せる表情と、
ご主人に見せる笑顔は、
全然違います。



ここまで書いて、
急に思い出した。

家族会のつどいで、
旦那さんを介護している女性が、

今年になって、3回プロポーズをされました。


と、言っていた。



晩御飯です。

花子さんは、 肉団子の、あんかけ定食。

肉団子あんかけ定食 

僕は、ハンバーグ。
ピーマンの肉詰めの翌日は、
必ず、ハンバーグ。
まとめて作った、こねた肉を、
冷凍している。
お酒は同じ、信濃の錦。

ハンバーグ

 


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